ポスト小泉の展望(2)2005年08月02日 18時15分47秒

小泉政権が終わったとしても、小泉政権を成立させていた社会的基盤が大変動を起こしたわけではありません。

結局、小泉政権を振り返ってみると、あらためて次のことがはっきりします。
すなわち、「護送船団方式」「日本的経営」「業界利益代表」などの戦後日本を支えた、経済社会のあり方(旧来のシステム)が終焉を迎え、グローバリズムと親和的な新自由主義改革を強引にでも推し進める必要性が小泉政権の存立理由だったということです。
そのような「改革」にそぐわない「自民党(政治の従来の構造)をつぶす」という点を、国民が支持したわけです。

その後、小泉政権の「改革」が進み、旧来のシステムを基盤に生活していた人々の生活苦が増大しました。しかし、この層の中にも、戦後自民党の集票構造につながっていた「保守層」と、そうではない人々(労組票や都市浮動層)とがいます。その人々に軸足をおく政治勢力が確固としてあるわけではないのが現状です。自民党守旧派、民主党の一部、無党派などにバラバラになっています。

また、憲法や外交などのイシューをめぐる、「保守」対「革新」というような対立軸は、経済・社会政策をめぐる対抗関係とただちに重なるようにはなっていません。
少なくとも、国民が選択できる形で提示されてはいません。ということは、結局、小泉型ストレート新自由主義になろうと、郵政民営化反対派的な緩和された新自由主義になろうとも、自民党政治という大枠を維持する方向で、あっちにぶれ、こっちにぶれしながら、自民党政権が維持されていくということになるでしょう。

もちろん、本当に郵政民営化法案否決→解散というやけくそ路線で、一時的に民主党政権がタナボタ式に成立することはありえます。しかし、民主党が上記の意味で、セイフティネット重視の新自由主義緩和路線を、憲法や外交などの国政を左右する問題とともに、総合的に提示することで、社会的にバラバラになっている、国民の現状不満層を統合できる力量があるとは、どうも思えないのが率直なところなのです。
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広島の日に思う2005年08月07日 22時08分00秒

昨日は、私的に新たなカップルの誕生に立ち会うことができ、すがすがしい思いをしました。

でも、新しい息吹の時は、偶然にも、過去を重く振り返り、この息苦しい時代にあって、希望を紡ぐ音に耳を澄ます日でもありました。
60年経て、このような情勢だからこそ、あの1945年は、重いものがあります。

ところが、日本政治は、小泉政権の杜撰で「売国的」とも言われる郵政民営化法案にヒートアップし、いよいよ正気と思えぬ事態につっこんでいくようです。
小泉氏にとっては、じっくり被爆者から話を聞くこともせず、 http://www.asahi.com/national/update/0806/OSK200508060024.html 6者協議でこれといったイニシアティブを発揮することもなく、「変人」としての信念をあくまで、貫くことに血道をあげているようです。
まだ、明日の参院本会議の帰趨はわからないし、すんなり解散などといかない可能性はあるにしても、小泉氏の「信念」には、ある意味で感服しました。

しかし、思えば、ヒトラーも、スターリンも、ポルポトも「信念」の人でありました。もちろん、こうした最悪人物に比肩するほど、小泉氏の所業は罪深いとは言いませんが、特攻隊に涙し、靖国に「平和を祈念する」ために断固参拝する、小泉氏の信念や心情が、人間的なものであるなら、せめて60年目の広島で、人間として肝心なことを忘れぬ振る舞いをしていただきたかったです。

・・・さて、ある人々からは徹底的に唾棄され、「過去の遺物」のように扱われる、<戦後民主主義>の真骨頂が試される状況に、いよいよなっていくように感じます。

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「郵政解散」のあほらしさ2005年08月09日 22時57分01秒

結局、「変人」の原点は変わっていませんでした。自らを「改革」の旗手と見せて、「自民党をぶっ壊す」なる懐かしい言辞で素朴な人々をだまして、「信念を貫いた」かのようにメディアに宣伝させ、最終的に現勢力を維持するという戦略です。

国民もバカにされたものです。小泉氏の記者会見や、今日の武部幹事長の「構造改革に賛成か反対かの選挙」という、何の具体性もない絶叫で、国民が小泉政治を支持するだろうと見くびられているのです。

小泉構造改革とは、結局、巨大な財政赤字を累積させ、天下りに見られる官僚権益を維持する構造には殆ど手をつけず、国民生活を圧迫する方向での競争激化を促進しただけだったのではないでしょうか。しかも、小泉氏は常に政策を丸投げして、イメージを先行させて、具体的内容は喧伝されるものとはほど遠いもので終わるのです。少なくとも、郵政民営化が国民の資産を外資がうまく利用できることをもくろむ民営化として案出されてきたことは間違いありません。

でも、怖いのは、小泉氏の空虚な「信念」を本人が本気になって信じていること、そして、それがメディアを通して、内容があるかのように伝えられる可能性が実際にあるということです。 選挙までに外交においても、またウルトラCをうつこともあるでしょう。少なくとも、現在のメディアも野党も、あほらしい「郵政解散」なるたわごとに対して、メスを入れることができていないのは、非常に気になります。
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岡田氏の演説2005年08月14日 19時17分32秒

偶然に、民主党の岡田克也代表の駅頭演説を聴きました。
聴衆に、質問用紙を書いてもらって、それに答える形(FAXしてもよいそうです)を行っていたのはよかったし、演壇に登るのではなく、人々と同じところから汗だくで懸命に話していたのも、好感がもてました。

しかし、彼は愚直な人ですね。ソフトな感じもありますが、ともかくまじめなのです。質問されたことについても、あえて、所得控除の縮減や将来的な年金消費税によって、財源を確保するということを言っていました。耳障りのよい空論を並べるのがいやなのでしょうね。

そういう点で、小泉首相のように、イラク戦争や30兆円の財政公約の問題の時のように、誤魔化したり言いつくろったりしない姿勢は、政治家としてまともです。

しかし、「民主党は郵政改革を主張している」というのが、単に郵貯限度額の引き下げを示すだけというのは、時間の限界もあるのだろうけれど、少し簡単すぎます。
やはり、民主党として小泉政治が、政策の一貫性や理念がない場当たり「改革」であり、民主党政権なら「総合的にこういう方向にいきます」ということを、庶民にわかりやすく示す必要があるでしょう。

「日本をあきらめない」は、あまりに感覚的すぎます。具体的な方向を庶民が直感的に把握できるものではありません。もっと具体的な方向を端的に示せる、スローガンが必要です。外交・年金・財政など、小泉政治の破綻とはまったく違うという展望を示す言葉でなければならないでしょう。

結局は、民主党自身の政策に、数字を並べた抽象論ではなく、総合的かつ具体的な内容が果たしてあるのかどうかということに実はかかっているのではないでしょうか。
thessalonikeさんという方が、次のブログで鋭く展開されているように、「郵政改革」解散はまやかしです。
世に倦む日日
今日のTBSの「サンデーモーニング」で金子勝氏が怒っていたように、小泉氏の手法はファシズムにもつながりかねない要素をもつポピュリズムです。

ですが、今、「小泉政権支持」という意識を持ち始めている人々の(特に無党派層の)最終的な投票行動が、選挙の結果を左右してしまのが事実でしょう。
その点で、民主党の岡田氏を支える人々に、もっと頭を使ってもらいたいものです。

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小泉首相は靖国神社参拝を2005年08月14日 22時12分32秒

小泉首相は、8月15日に、自らの公約通り靖国神社に参拝すべきです。

私は、原理的に靖国神社に内閣総理大臣という公職に就く人物が、私的な宗教的な行為として参拝する権利を擁護する者です。しかし、私が、2005年8月15日という特定の日に、小泉氏が靖国神社に参拝すべきだするのは、そのような原理的な立場からではありません。

ついでに言うと、私は、簡単にいえば靖国神社は、近代日本の為政者が国民の生命を、国民が選択したとはいえない戦争に捧げさせる(調達する)ためのイデオロギー装置だと思っています。そして、現代でも、大惨禍をもたらした為政者の責任を免罪し、戦後民主主義を否定し、今後、民主主義国家としても遂行可能な戦争に国民を駆り立てるのにも役立つ可能性の高い、イデオロギー装置の一つだと考えます。
抽象的で申し訳ありませんが、私は靖国神社の存在の仕方そのものに否定的です。(しかし、くどいようですが、すべての日本国民が個人の信条において靖国神社に参拝する権利の行使を擁護します)。

・・と、ここまでは前置きに過ぎないのですが、「郵政民営化」を自らの公約として小泉首相が固執し、乱暴な解散を行ったその姿勢が、本当に深い質をもった信念なり、理念なりに根ざしているなら、靖国神社参拝についても、そのような姿勢を貫けるはずです。

どんなに中国・韓国などとの関係が悪くなり、国連常任理事国入が破綻し、日本経済への悪影響も懸念されても、靖国神社参拝を貫徹できるはずです。 そして、そこにこそ小泉氏が、単なる凡百の保守政治家ではなく、革命的な「改革」を実行できる政治家である点を示すことができるでしょう(苦笑)。


それが、小泉氏にとっても、民主政治のもとでの政治家としてのまっとうな道というものです。彼が誤魔化しの政治家ではないなら、敗戦の日に靖国神社に堂々と参拝すべきです。

もちろん、困ったことに「郵政民営化」賛成者が増えたように、「靖国神社参拝」賛成者を増やすことにつながる可能性が高いことは事実です。非常に危険なナショナリズムを一層鼓吹することになるでしょう。しかし、それが小泉政治であり、また一部の日本国民の「民度」の現実なのです。
本来的には、明日の靖国参拝という小泉氏自身行動によって、アジア外交や拉致・ミサイル問題の解決を遠ざけてきた、靖国神社問題を、総選挙の課題として浮かび上がらせるという意味をもつはずなのです。そうなるかならないかは、小泉首相の側の問題ではなく、日本のメディア・野党・そして日本国民自身の問題です。

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自民党執行部の衆院公認候補の選びに思う2005年08月16日 22時59分30秒

自民党執行部が、郵政民営化反対派に対抗するためなどに、衆議院選挙で次々公認候補を決めています。

それが、日々のニュースになること自体が、自民党の大宣伝になっているわけですが、ライブドアの掘江社長を一生懸命持ち上げて猫なで声で手招きする図はぞっとしません。IT産業の利権化とも関係するのかもしれませんが、女性や若手エリートを重視することも含めて、徹底したイメージ戦を闘おうという、小泉執行部の姿勢は一貫しています。

思えば、昔、宮田輝や石原慎太郎をかつぎだした時も、失笑を買ったけれど、その頃は、衆議院選挙にこうやって堂々と「タレント」的候補を集めるようになるとは、夢にも思いませんでした。(純粋の「タレント」でなくても、結局「タレント」的効果を狙っているのだから本質は同じです)

でも、政策を丸投げして、官僚機構にのっかって、ポピュリズム政治を進める小泉氏には、非常に似つかわしいやり方なのですね。まあ、業界と地元ボスの利権調整を仕事と考えていた議員と比べれば、まだましだともいえるのかもしれません。

言うまでもないことなのですが、小泉氏たちには政治家としての矜持とか、「恥」というものが、まったくないのですね。 吉田茂や鳩山一郎が、この保守政党の状況を見たら、何というでしょうか。

政治が限りなく軽くなり、理性が軽んじられていった道程の一里塚として、小泉政治は歴史に長く残ることは確実です。この候補者選定劇は、改めてそれを印象づけてくれました。
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うんざりするニュース2005年08月17日 23時17分30秒

昨年、ブッシュ氏が再選されたとき、かなりのアメリカ人が真剣にカナダ移住を考えたという話がありました。お金持ちでなくても、そんな簡単に移住して仕事などを見つけることができるか?などと、疑問に思いましたが、その話も他人事ではないような雰囲気となってきました。日本で小泉自民党が総選挙で勝ってしまったら、私たちはどこにも逃げ出すところはないじゃないですか!

それは、冗談だとしても、今さら「国民新党」というのは何なのでしょう。「国民」という印籠をつくって(買ってきたのか?)、「平成の水戸黄門」とか言っている綿貫氏は、どういうセンスをしているのでしょうか。これでは、実際は、小泉メディア利用ポピュリスト集団の引き立て応援団ではないですか。

そして、ホリエモンを亀井静香の選挙区に立候補させるとか、東ちづるを野田聖子の選挙区に立候補させるとかいうニュースが続き、頭痛がしてきてしまいました。

いったい、議会制民主主義というものをどう考えているのでしょうか。実は自民党体制がそれだけ危機的だということなのですが、目先の勝利のために、自民党執行部全体が、代議制の原理なんてことを考えられなくなっているのでしょう。だけど、それほど国民をなめていてよいのでしょうか。見識のある国民は全国にかなりいるはずなのですが。
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