金正日から安倍晋三とジョージブッシュへプレゼント2006年10月06日 22時36分12秒

北の核実験、8日にも…米政府高官が推測

 【ワシントン=坂元隆】ロイター通信が6日報じたところによると、3人の米政府高官は、金正日・朝鮮労働党総書記が総書記に就任した8日に北朝鮮が核実験に踏み切るかもしれないとの推測を示した。
 また、当局者のなかには、朝鮮労働党創建記念日(10日)やコロンブスの米国到達を記念する米国の祝日(9日)に核実験が実施される可能性があるとの見方も出ている。

安倍首相の訪中・訪韓のタイミングに合わせて、金正日政権が核実験を言い出すというのは、あまりに出来すぎていますね。
中国は「安倍氏は靖国参拝をしない」とふんで会談実現に動いたようですが、その問題がクローズアップしないためにも、安倍政権にとっては北朝鮮が核実験という愚行を行ってくれた方がよいわけです。

国会で安倍氏は、政府公式見解としの村山談話について、首相個人の見解のレベルでも(それは純粋私的な意見の次元ではありません)受け入れるようなこと言っています。
これは、対中・対韓の関係を自分からは悪化させるつもりはないという姿勢をアピールしているからです。
国内的にも「タカ派」「右傾化」イメージを消すようなポーズをいろいろととっています(たとえば教育再生会議のメンバー)
しかし、北朝鮮核実験というプレゼントがあれば、国内世論の方が「タカ派」的強硬論にドライブがかかります。安倍政権が望む方向を国内世論に押されて進むという形が完成します。

軍事的な緊張感は、一挙に「美しい国」に洗脳される人々を増大させます。

何よりも核実験があれば、アメリカは相当の実力行使をする可能性が高いでしょう。核兵器ができれば叩けなくなるとさかんに言われていますが、そんなことはありません。核兵器製造関連や軍事施設を直接攻撃することは不可能ではないでしょう。
そうするとどうなるか。

第1に、ブッシュの「平和のための断固たる行動力の行使」は、このままでは敗色濃い中間選挙の情勢を劇的に変えます。

第2に、大規模は軍事攻撃とならないまでも何らかの実力行使や「断固たる行動」が、中国・韓国の具体的な対北レスポンスとの違いを浮かび上がらせるでしょう。その時、安倍政権はもちろん中国・韓国と袂を分かち(もともとですが)、ブッシュにくっついていくのです。

そして安倍右傾化チームは、靖国でも堪え忍び、歴史認識でも持論を曲げて対中・対韓改善に努力したのに、北朝鮮に大甘で日米の連携を妨害する中国・韓国の日本批判はあまりにひどいというムードをつくることができます。

というわけで、金正日の核実験プレゼントは、ブッシュ氏に面目をほどこし、安倍氏に本来の教基法改定・改憲のナショナリスト「美しい国」路線を氏からの世論で驀進するメモンタムを与えるのです。

全体主義・国家主義で共通の「美しい」トライアングル協力関係ということですね。

中国全体主義の克服と日本の自由民主主義の保守2006年10月08日 22時58分59秒

とりあえず安倍氏としては、中国訪問を「成功」させて、内外の不安を払拭することができるかもしれません。しかし、これは既定の道筋でしょう。かつて鳩山内閣が日ソ国交回復をやったように、ポリシーとして右派的=タカ派的であるほど、パフォーマンスとしてハト派的な政策をとりやすいということも言えます。

しかし、それは本質的な次元での動きとはいえません。安倍政権が戦後レジーム=リベラル・デモクラシーを克服し、現代的全体主義をめざしている本質をもっているからこそ、パフォーマンスの次元では、ある幅をもって振る舞う必要があるということでしょう。

翻って安倍氏が訪問した中国も、大きな問題を抱えています。一つには、日本など問題にならないくらいの「格差社会」を生んだ野蛮な資本主義の現実をがあります。

また、それは、陳良宇解任に見られる、腐敗一掃と絡み合った権力・路線闘争を随伴します。そして、それは中国の一党独裁・全体主義レジームの解体を要請していくことにならざるをえません。

日本において安倍政権が担う反動=全体主義指向の息の根をとめる努力は、中国の現存する全体主義の息の根を止める努力と手を携えなければならないでしょう。

つまり、日中の庶民にとって、次のことは共通の目標になるのではないかと思います。

1.野蛮な資本主義を是正して、社会的・公共的な市場経済を確立することによる格差是正。
2.人権・個人の尊厳を破壊する国家主義・全体主義と闘い、自由民主主義を保守・発展させる、あるいは自由民主主義を獲得する。
3.「反日」「嫌中」などの排外主義を克服して、東アジアの共有する文化と伝統に基づく対話と交流をすすめる。