キャノンに親近感をもっていたが2007年01月06日 15時45分02秒

 年末年始で気になったニュースとして、キャノンの政治献金再開と「御手洗ビジョン」の発表がありました。御手洗キヤノン会長が経営者として実績があることは確かなのですが、しかし・・・
キヤノンは26日開いた取締役会で、政治献金を年内に再開することを決めた。自民党の政治資金団体に数千万円を献金するとみられる。  同社は04年6月に外国人の株式保有比率が5割を超えたため、外資比率50%超企業の政治献金を禁ずる政治資金規正法に基づき献金を中止していた。しかし、今月13日に改正政治資金規正法が成立。外国人の持ち株比率が過半数の企業も献金が可能になり、同社の御手洗冨士夫会長が日本経団連会長の立場で社会貢献としての企業献金を推進する姿勢を示しているため、献金再開に踏み切った。
<政治献金>キヤノンが年内再開へ 自民党の政治資金団体に
 法人税減税を政策として掲げる安倍政権与党の自民党に献金をすることが「社会貢献」となるというのは違和感を感じてしまいます。
 御手洗氏の経営が、目先の企業利益にのみ目を向けるのではないという理念に基づくことはわかるのですが、前から「愛国心なき経済改革は失敗する」と言っていたように、彼にとっては公共の尊重=愛国心であり、それは「美しい国」路線へと結びついていくのでしょう。

 ですから「御手洗ビジョン」でも、「美しい薔薇が健やかな枝に咲くように、美徳や公徳心は愛国心という肥沃な大地から萌え出る」(「希望の国、日本」)と書かれています。
 これは単なるレトリックではないでしょう。美徳や公徳心も「愛国心」が前提になるという考え方は、かなり国家主義的なイデオロギーが下敷きにあるといわざるを得ません。民主主義社会での美徳や公徳心は、個人が家族などの人と人との関係において健やかに形成していくものです。北朝鮮現体制と同じ全体主義を唱道していると言われても仕方ないような、復古主義的・国家主義的な内容になっています。(美徳や公徳心を本当に大事にするなら、やらせや粉飾で国民の人権を抑圧する、あの「エセ愛国心」をこそまず問題にしなければいけないのはずですが・・・)。

 経団連のビジョンや会長である御手洗氏の言動・思想とキャノンを直結させたくはないし、そうすべきではないでしょう。
 私は、憬れのマニュアル一眼レフをやっと手に入れた高校時代から始まり、初めて固定給を得る身になって買ったEOSや、その後の初代のIXYデジタル、インクリボン時代から数台を買い換えて使用してきたPC用プリンターなど、生活歴とキャノン製品購入は切っても切れず、ユーザーとしてかなり思い入れがあります。しかし、上記のようなニュースが続くと、どうしてもキャノンと距離を感じてしまい、心情的に残念な気分です。

 尚、経団連ビジョンについては、法人税減税・「労働市場改革」・少子化対策などの内容も大きな論点になり、安倍政権のとるべき経済政策を考えるうえでも、きちんと議論されるべきでしょう。ただ、消費税の引き上げ率を安倍政権の「上げ潮」政策に合わせてたった2%に抑えたりと、ずいぶんと政治主義的な点は非常に危惧します。

ピンぼけの共産党による民主党批判2007年01月06日 21時32分35秒

 日本共産党の第三回中央委での志位委員長の報告を読むことができました。
 安倍政権への批判などは的を射ている点が多々あると思います。しかし、安倍政権の暴走ストップを願う、私たち庶民の声が届いているのでしょうか。もっとも残念なのは、民主党批判のあり方です。志位さんはこう言っています。
  ・・・こうして三年余りの動きを検証してみても、三年前の民主党と自由党の合流が、それまでの民主党の性格を、いわばもう一つの自民党へと大きく変質させた、このことは明らかです。今日の民主党は、自民党政治の「三つの異常」を共有する政党であり、政治の基本でどちらかが「よりまし」とはいえないのであります。
 わが党は、国会内の対応で、与党の暴走を食い止めるうえでの野党間の連携は、条件があれば今後もすすめます。しかし、民主党がもう一つの保守党への変質を明瞭にしたもとでは、政権共闘はもとより、国政選挙での共闘も問題になりえません。自民・民主の合作としてすすめられている憲法改定のくわだてを打ち破るために、草の根から国民的多数派を結集し、改憲派を包囲・孤立させていく、このことが、今後数年を展望して国政の最重要の課題になっていることを強調したいと思うのであります。(拍手)
 まったくため息をつくしかないというところでしょうか。

 共産党が民主党の政策を批判することは当然のことですし、与野党問わず政策論争をどんどんやってほしいです。そして、自由民主主義・平和主義を保守する立場からすれば、志位氏が言うように<改憲派を包囲・孤立させることが最重要課題>です。
 しかし、このブログでくり返し書いているように、2007年の現在の情勢での、具体的課題は、国家主義的・米国従属戦争参加目的の憲法改悪を阻止するためには与党を参院選で敗北させることであり、それを、何より優先させなければならないと思うのです。
 
 いくら民主党に入っていたリベラル・革新系の票を共産党が少しくらい獲得できても、野党の協力もなく、建設的な政策論争もない泥仕合をして自民党が勝てば、憲法改悪への道にまっしぐらに進むでしょう。いくら共産党の票が増えてたとしてもどうなるでしょうか。
 自民党が国政選挙で得票率では少数派なのに多数議席を占めて、教育基本法改悪という悲惨な結果を許した、この数年の経緯から明らかです。

 「民主党はもう一つの自民党と同じ」として国政選挙での協力もしないと宣言するのはのは、あまりに乱暴です。防衛政策ひとつとっても民主党は「専守防衛」によって集団的自衛権に枠をはめています。共産党から見れば不十分に見えるかもしれません。しかし、今、問われている、9条を変えて米国の下請け戦争に参戦できるようにする憲法改悪に民主党は賛成はしていません。

 
 日本国憲法の理念に基づき、日本及び世界の平和を確保するために積 極的な役割を果たす。自衛権は、これまでの個別的・集団的といった概念 上の議論の経緯に拘泥せず、専守防衛の原則に基づき、わが国の平和と 安全を直接的に脅かす急迫不正の侵害を受けた場合に限って、憲法第9 条に則り、行使する。それ以外では武力を行使しない。
 これが民主党の政策マグナカルタの防衛政策ですが、9条改悪を俎上にのせようとしている安倍自民党と同じだと志位共産党は強弁するのでしょうか?

 志位氏は<民主党批判を進めるうえで「情報提供型の対応」をするのが大切だ>と言っています。
 多様な潮流をかかえた民主党が、外からも見える形ですったもんだしながら政策をつくっているのに対して、何の情報公開もなく「中央」から正しい政策が決定される共産党が<情報提供型>を強調するというのも何ともアイロニカルです。

 大きな歴史の流れを見れば、ファシズムの政権獲得を許した教訓は、社会主義者でなくても共有されていたはずですが、「過去の戦争への無反省という異常」を指摘することができなくなるのではないかと危惧します。志位氏は社民党が民主党と選挙協力をすることを批判していますが、安倍自民党の勝利に手を貸すような<批判>ではないあり方を望みたいものです。

 尚、aiubisさんに紹介していただいた、2007年参議院選挙 野党共闘 にもTBをします。