「戦後レジーム」脱却と「女性は生む機械」は同一発想2007年01月31日 00時35分12秒

 安倍首相は、小沢一郎民主党代表らとの国会論戦でも、「戦後レジーム」を連発しています。

 「改憲」などの「戦後レジーム」脱出より「国民生活に関わる格差是正など生活維新が当面の課題だろう」と言われて、「両方大切です」というのが安倍さんの答え。そして、「戦後レジームからの脱却」には、「教育問題などの改善」も含まれるのだという論法。

 本当は、公共心=愛国心=「御国のために」という教育が大切だというのが、「戦後レジーム」=自由民主主義からの脱却(修正)という安倍さんの理念なのだけれど、そこをきちんと説明しなければ議論は深まりません。

 ところで、柳沢厚労相の 「女性は産む機械」発言が問題になっているけれど、少子化が国家の問題だと考える政治家たちの発想を端的に示しています。それこそ安倍さんが懐かしむ、戦前日本のイデオロギーとぴったり一致します。
 あの頃、厚生省が発行した『妊産婦手帳』には、「立派な子を産み國につくしませう」と書かれていました。
 もちろん安倍首相の祖父様が大臣をつとめられて、「皇国」のために「全身全霊を尽」くされていた頃のお話です。

 「女性は生む機械」という発言は、女性を傷つけているだけではありません。子どもを生むことを、まず「統計」の対象としてしか見ることができない柳沢氏の発想こそが問題なのです。生命や家族について、個々人がどういう希望をもち、どのような選択をせざるをえなくなっているかというところから考えないのは、結局、彼らが国家=全体の視点でしか見れないからです。
 個人の尊厳から出発する自由民主主義=「戦後レジーム」に憎悪を抱く、彼らの全体主義的発想と無関係ではないでしょう。

野党は協力して政権交代に向けた努力を2007年01月31日 22時26分47秒

 安倍政権の直感的批判が高まっています。この批判が、格差を生む経済政策と、自由民主主義を押し殺す国家主義という路線そのものへの決別へと至り、政権交代に向けた序曲へと進むことを望みます。

 ところが、他方では、こういうニュースも流れてきます。
<共産党>厚労相の辞任要求決めた党首会談に欠席
1月31日0時1分配信 毎日新聞
 柳沢伯夫厚生労働相の辞任要求を決めた30日の野党3党首会談に共産党の志位和夫委員長の姿はなく、民主党との溝を印象づけた。民主党など3党は会談後、首相官邸への柳沢氏の辞任申し入れに加わるよう呼びかけたが、共産党側は審議拒否が申し入れ内容に含まれているとして拒否した。
 その後、共産党も審議拒否に加わったようですが、共産党指導部のピンぼけぶりが深まってしまいることは残念です。

 正しいと信じる理念を堅持し、批判と討論という作業を通して、政治的な意思決定を行っていくことは民主主義に必要不可欠です。
 しかし、他方では政治においては、「正しいこと」(正しいと自分たちが信じていること)のみを言っていればよいなどということは許されません。政治の力によって現実を変えていくためには、異なる意見との調整と妥協という局面を通過し、権力を行使してより良い政策を実行していくことが不可欠です。

 なんて、政治のabcを書くのもどうかと思いますが、今、安倍政権の支持率が下がり、「敵失」によってそのメッキが剥げかかっている時に、なぜ野党が協力して政権交代に向けた展望・プログラムをもとうとしないのでしょうか。なぜ、共産党指導部は、そうした主体的な姿勢をもとうとしないのでしょうか。

 共産党は「新しい人民の民主主義革命」を担う政府・民主連合政府という、自らの「綱領路線」上の公式に沿う政権が転がり込む(なんてことは何十年経ってもありませんが)しか、政権を考えないのでしょうか。
 物事を静態でしかとらえず、常に「正しいこと」を言っていればよいというのでは、決して現実の動態にコミットすることはできないでしょう。

 共産党と民主党、あるいは民主党の内部に意見の相違があることをあげつらう人は、(共産党の人であれ、民主党の人であれ)、「戦後レジーム」破壊という悪魔の所業との闘いというもっとも重要な課題を正面に据えて、現実と向き合おうとしないか、(正解と不正解、○と×などというように)固定的・図式的にしか物事を見られない頭でっかちでしかないでしょう。

 政権のための政策の一致が容易でないことは事実でしょう。しかし、自公政権があと2年も3年も続くことを許すと暗黙の前提にして、選挙に勝てるわけがありません。
 政権交代・選挙協力に向けて、政策論争をしようという合意をまず、野党は確認すべきです。安倍政権の政権の何が問題なのかということと、替わりに何をすべきなのかが、わかるように野党は議論すればよいのです。

 本当に政権交代をする気がない、自分たちの既得領域を守るためだけに「政治」をやっている野党など、国民が支持するわけありません。

 私たち庶民は、歴史のドラマを直感で知っています。