「国語力がない」のは橋下弁護士さんではないのか2007年02月09日 23時54分08秒

 程度の低い大臣の発言を感覚的レベルでの批判に終始してしまっては、安倍内閣が体現している国家主義的な人口政策なり「少子化対策」への批判には至らないということがはっきりしてきました。

 とはいえ、感覚的レベルでも「女性は生む機械」発言の問題点を捉えられない人が多いことにも驚かされます。

 テレビ朝日のワイドショー系番組には、コメンテーターが勝手に怒りをおしつけてくる絶叫系「北朝鮮型」のものが多いのですが、偶然にもコメンテーターの弁護士という人が、<日本人の国語力が低いのに呆れる。前後の文章を読んで、柳沢氏の発言のキーワードは何かと問われたら、答えは『生む機械』じゃない。みんな不正解だ>などと言っているのを目にしました。まったく失笑してしまったのですが、今日か昨日も同じ様な発言をしたようです。
 次のようなニュースにもなっているようなので、私なりの感想を一言。
 橋下徹弁護士 「柳沢擁護」に熱弁
 柳沢発言の、少なくとも引用されている前後の文章の要旨で、「機械」という言葉がキーワードにならないとなぜ言えるのでしょうか。
 一応、柳沢さんは次のように言ったとされています。
 なかなか今の女性は一生の間にたくさん子どもを産んでくれない。人口統計学では、女性は15~50歳が出産する年齢で、その数を勘定すると大体分かる。ほかからは生まれようがない。産む機械と言ってはなんだが、装置の数が決まったとなると、機械と言っては申し訳ないが、機械と言ってごめんなさいね、あとは産む役目の人が1人頭で頑張ってもらうしかない。(女性)1人当たりどのぐらい産んでくれるかという合計特殊出生率が今、日本では1.26。2055年まで推計したら、くしくも同じ1.26だった。それを上げなければいけない。
柳沢厚労相vs女性議員…福島氏ら16人直接辞任要求

 これが事実だとすると、この日本語(国語)文の主旨は、「女性に1人頭で頑張ってもらうしかない」ということなのは明らかでしょう。つまり、ここでは「出生率が低下しているのは、(子どもを生むことができる)女性の1人当たり出生率(合計特殊出生率と彼は言っていますが)が下がっているからだ(同義反復)からこそ、女性が頑張って子どもを生まなければならない。それしかない」と言っているのです。
 橋下さんのような人にとっては、<「女性1人当たりの生む数を増やすしかない」っていうのは当然じゃない?>っていうことになるのでしょうか。
 それとも、<その主張の当否はともかく、「機械」っていう言葉がなくても表現できることを柳沢氏は言いたかったので、「機械」というのは下手な比喩だから騒ぐことはない>、となるのでしょうか。

 それでは失礼ながら<国語力がない>のはご自分であることを自己暴露されているとしか言えないでしょう。
 「機械」という言葉は、「女性1人あたりの子どもを増やすしかない」という、ここでの思想を端的に核心的に表現している言葉であること、つまりまさにここでの象徴的なキーワードになっているということが要点です。それが理解できないとしたら、どうなのでしょうか。多くの良識をもつ人が直感的な非難も含めて批判しているのも、それ故でしょう。

 入試問題なら、問題文がこのような具合だったらどうでしょうか。
以下の文は、次世代育成支援対策(少子化問題対策)を主管する国務大臣が公共の場で行った演説の一部であるが、以下の問に答えなさい。

 つまり、この談話がなされた広義の文脈が前提にすでになっているのです。(だから報道され、テレビで騒いでいるんでしょう?)  女性ではなく、一介の市民でもなく、単なる代議士でもない、厚生労働大臣が、「女性に子どもを生んでもらうしかない」と言っている、だからこそ、彼は「機械」「装置」と言えたし、現に言ったということがわからない人が、「国語力」を云々しているというわけなのです。

 伝えられている発言(の中の引かれている文)では、主体的な意思をもつ人格として個々の女性がまったく考慮されておらず、「次世代育成支援対策」の当の責任者が女性を「生んでもらう」という位置づけでしか見ていないということが問題の核心でしょう。それを明々白々に示してくれているのか「生む機械」という言葉です。

 「国語力がない」のは柳沢さんも同じかもしれませんが、彼は国会で自認したようですから、実はテレビでトンチンカンなことを言っているコメンテーターよりはましということです。