皇室典範改正問題 新自由主義と保守イデオロギーなど2006年02月04日 23時20分36秒

女性天皇・女系天皇を認める皇室典範改正について、「反対・慎重論」が自民党内から相次いでいます。メディアがとりあげるのは、ポスト小泉をめぐる政局と絡むからで、それは私たち庶民にとっては「どうでもよいこと」です。政局次元では、皇室典範改正案、山崎拓・加藤紘一氏が賛成を表明というのも、「おもしろい展開」ですが。

「男系を維持してきた万世一系の伝統を守れ」という主張は、<保守>を支えてきた信仰からして当然のことだと思います。が、それは何らかの価値観や信念体系から由来しているわけではなく心情的感覚でしょう。まあ、それが日本の俗流保守主義の背骨にあるものなのだから仕方ありません。

ただ、小泉新自由主義改革が文字通りの「市場原理主義」であるとすれば、当然に原理的には「天皇制」それ自体に価値があるとみなすはずはなく、まして「男系天皇」でなければならないなどという「時代錯誤のイデオロギー」にコミットする必要はありません。

昨年ホリエモンが「天皇制はいらない」という主旨のことを言った(後ですぐ訂正したようですが)ことに象徴されますが、すべての財・資源を市場を通して配分することを信仰するイデオロギーにとって、「天皇制」は「選好する人がいれば売れる」アイテムであり、その意味で貴重な文化財だということにすぎないからです。

とはいえ、現実の新自由主義者は、市場が現実に存在する制度や文化によって支えられていることを、よーく知っているわけで、ピューリタンの「市場原理主義者」ではない。小泉氏自身も新自由主義者というほどの理念をもっているかは疑わしいですが、ともかく、彼に代表される(政治権力による)「政策」が不可欠なのだから、「時代錯誤のイデオロギー」が新自由主義政策そのものを停滞させてしまうわけにはいきません。
そもそも小泉氏らの狙いは「天皇制」の維持・存続であり、<愛子さま>に象徴される皇室イメージの存続と利用なのですから、何ら<保守>を逸脱するものではないはずです。
しかし、「格差社会」がクローズアップされる中で、反新自由主義と「時代錯誤のイデオロギー」が結びつくのは困るので、結局、自民党内がどうであれ、能動的な国民世論の状況をかなり正確に観測して、小泉氏らは皇室典範改正案の国会提出の可否を判断することになるでしょう。

いずれにせよこの「時代錯誤のイデオロギー」は、「両性の平等」への攻撃・否定・軽視の傾向を内包しているので、自由民主主者にとって、けっして見過ごしてよいものではないと思います。

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不断の努力によって保持しなければならない2006年02月06日 06時36分35秒

「この憲法が国民に保障する自由及び権利は,国民の不断の努力によって,これを保持しなければならない。又,国民は,これを濫用してはならないのであって,常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ」


「不断の努力」が必要なのはわかっていても、あらゆるところで自由と権利を、国家権力は壊しにかかます。

ネパールでは国王が自らが行ったクーデタ1周年を前に、市民や活動家を大量に逮捕しました。

アメリカ合衆国政府がグアンタナモで行っている違法な拷問・拘禁を、世界の世論はまだ止めることができていません。
警察がシーハンさんに謝罪 反戦Tシャツ着用で逮捕は大きく報道されていますが、すでにアメリカ各地で、無名の市民がメッセージのあるTシャツ着用を理由に逮捕されているのが、「自由民主主義の祖国」の「表現の自由」の状況のようです。Cindy Sheehan and Beverly Young Aren’t the First to Get Booted for T-shirts

この国においても、集合住宅へのビラまきの自由もなく、大学においてさえ「表現の自由」が危機に瀕していることをメディアは大きくとりあげていません。無名の市民の自由は、知らず知らずのうちに浸食されています。

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非人間的な制度2006年02月13日 23時10分37秒

象徴天皇制のもとでも、「天皇」は政治的な機関だといえるかもしれません。しかし、天皇や皇族の地位にある人々もまた、人間であることを誰も今や否定しないでしょう。

近代の支配者が創り出したフィクションやイデオロギーを「日本の伝統である」と信仰することは自由ですが、妊娠・出産という人間の生の営みを、皇室典範改正案を国会に提出するかどうかというきわめて政治的決定の因子にしてしまうことが、いかに非人間的なことか、想像することもできない(許さない)人々のイデオロギーなど、滅んでしまえ!と思います。

生殖行為が君主(たち)の第一の仕事だとはいえ、いかにもグロテスクな光景ではありませんか。「男子待望」などと言い立てる連中は、子どもを授かり育む行いの奥底にあるものに、鈍感でありすぎます。

人間的な心を圧殺しなければ維持できない制度を、自己の欲望を満たすために、「皇族」という一部の人々に押し付ける、非人間的な制度そのものの<廃止>に向けて議論すべきでしょう。

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「ライブドア振り込み疑惑」への危惧2006年02月19日 19時33分46秒

堀江貴文がライブドアの金を武部勤自民党幹事長の二男に振り込んだ疑惑が、民主党議員から国会に持ち出されましたが、いったい民主党の国対は何を考えているのでしょうか。
今日のテレビでは以下のようなことだったようです。
「信ぴょう性高い」と強調 振り込み疑惑で前原代表
民主党の前原誠司代表は19日午前、フジテレビの報道番組でライブドア側から武部勤自民党幹事長の二男への金銭振り込み疑惑について「信ぴょう性が高いものと思っており、われわれは自信を持っている」と重ねて強調、国政調査権を発動して調査するよう主張した。
 前原氏はライブドア前社長の堀江貴文被告がメールの存在や振り込み自体を否定していることには「堀江さんは黙秘して話していない。逮捕の要件まで認めていない人が『やっていない』と言ったからといって信じるのはおかしな話だ」と指摘。「われわれは金融機関にかかわる情報を得ている。国政調査権を発動する時はピンポイントだ」と強調した。
 これに対して、自民党の片山虎之助参院幹事長は同番組で「国政調査権は伝家の宝刀であり、権威にかかわる。もう少しいろんなものを出していただき、ちゃんとした証拠がなければ難しい」と反論した。
 信憑性があるなら、なぜその根拠を示さないのか、まったく不可解です。ライブドアの違法行為や問題行動が、武部氏などの政府自民党中枢と関わりがあると考えるのは、まったく自然なことですが、それをどのように暴露していくのかという、戦術・戦略がまったく見えない、子供だましのパフォーマンスではないかとの危惧をもちます。

かつて日本社会党の国対は、自民党となれ合って55年体制の甘い汁を吸っていたわけですが、それでも「安保三人男」による政権追求は、もっとずっとまともでした。

「今週の国会論戦では、まともな証拠を出す」と、テレビ朝日のサンデープロジェクトで民主党の櫻井充議員が言っていましたが、まったく迫力も説得力も欠けていました。今の時点で公表できないものが、来週は公表できるというのはいったい何なのでしょうか。

もし単なる怪文書まがい情報をもとに「国政調査権の発動」などを要求しているとしたら、民主党の責任が問われるのは当然のことです。小泉自民党や堀江貴文に象徴される、新自由主義の問題点をむしろぼかしてしまう結果になるでしょう。
まだ、結論的なことは言えませんが、現時点で民主党への不信感が高まったことは事実です。

「掘江メール」問題は「自爆テロ」だった2006年02月22日 22時40分40秒

民主党の前原執行部が行った「掘江メール」問題の「ガセネタ」性がほぼ本日の「党首討論」で明らかになったといわざるをえない。

民主党が「ガセネタとわかるメール」「証拠を示せない材料」を持ち出したのは、いわば「自爆テロ」的な、一点突破全面展開的な、無展望な妄動にすぎなかったということだろう。
しかし、そう見るのは、民主党指導部やそれと連動した永田議員を好意的すぎる批判だ。通常の政治を見る目をもって評すれば、「深読みだが、安倍晋三と前原誠司が示し合わせて偽メール事件を仕掛けたのではないか」(世に倦む日日)など、ウラがあると考えるしかないような、利敵行動といわざるをえない。
もちろん、民主党に情報を持ち込んだ人物が「信憑性」を裏付けるものをもっているという可能性は全面的に否定できないが、それを示さない(せない)という点で、民主党のやっていることは問題外だ。

結局、国民の世論や理性を信じて、その大衆的行動を媒介していこうという姿勢がまったく欠落しているから、こういうことになるのだ。

私は、左翼の前衛主義は、人々を全体主義的に「指導」して「革命」を実現しようとする危険な思想だと思う。しかし、「政党」や政治家が、専門家としての知見・戦略・展望を提示してそれに基づいて行動していくことは不可欠だと考える。
メディアや「政局」の中で、政治を動かそうというエリート主義者は、小泉と同様のパフォーマンスを行ったり、今回のメール問題のように稚拙な「自爆テロ」的な妄動を行うしかできないということだ。

無責任な民主党前原執行部2006年02月26日 17時17分45秒

「堀江メール」事件について。もっとも利益を得ているのは、小泉自民党であることは確かです。
小泉自民党を批判する人々が、「民主党を批判するよりも、肝心な武部氏らとライブドアとの関係解明が大事だ」と主張しても何の説得力もありません。むしろ、武部氏は被害者であるかのようなイメージまで作られています。
それが、「堀江メール」事件の第1の効果です。

第2の効果は、小泉自民党が、前原民主党の責任追及をきちんとせず、前原執行部を温存させることで、貸しをつくるとともに、国民の民主党への信頼感を徹底的に弱化させることです。

(「憲法改正の「神話」の実現へ」ということだとも指摘されています。 おもしろニュース拾遺
だから、まともな民主党員は、本気で前原執行部と対決しようとしています。
新自由主義に反対し、小泉改革を批判してきた人たちが、「信憑性のない黒塗りメール」で、国政調査権の発動を要求する愚行を肯定してしまったら、目的のためには手段を選ばないという、ファシズム的手法にイエスということになります。

無責任な民主党前原執行部への批判の声を集中し、小泉自民党に奉仕する民主党内の潮流を「解体」させていくことが、今、必要なことです。
そのことは、ライブドア事件などの4点セットの利権構造の解明を前に進めることと矛盾しないし、むしろそのために、必要なことではないでしょうか。