NHK「日本のこれから 若者」を見て2005年10月23日 17時15分19秒

土曜も働かされて疲れたためか、途中少し居眠りをしてしまいましたが、「“NHKらしくない”“予定調和を排した”“本音の”討論番組として注目されている「日本の、これから」」(byNHK)の「知っていますか?若者たちのこと」を見ました。「スタジオに集まった様々な年代・立場の市民や有識者がVTRを交えながら徹底討論し、日本社会のこれからを考えていく」という番組です。

前半は、メディアが大好きな、渋屋の路上で座り込むガングロギャルやそれに顔をしかめる「大人」という図式から始まり、フリーターで生きるのは「甘い」かどうかというような、本当にNHKらしい(テレビらしい)くだらない図式の話が延々と続きましたが、我慢して見ました。

その中でも、渋谷に集まるギャルや若者たちの「サークル」が9.11に4000人近く集めて踊ったり平和も訴えたというイベントが紹介されたり、下北沢で「マンガ読み」をやっているという若い男性が現れたりと、初めて知ったこともあり、スイッチを切らないでよかったかな。

ただ、笑ったのは、スタジオにいたバカオヤジが「集会をやってそのあと、茶髪の若者たちは悔い改めたのですか?」というようなことを言って、ゲストの泉谷しげるに「くだらねーこと言うんじゃねーよ。年寄だって白髪染めつかっているだろ」云々とたしなめられていた?こと。

後半になって、やっと地方で若者が就職するのがいかに厳しいかという現実の問題がビデオで紹介され、スタジオでも放送大学教授で社会学者の宮本みち子さんが、政策的な援助がなくて若者がフリーター・ニートから抜け出せないという当然の指摘をしていました。サッチャーの規制緩和・民営化路線によってイギリスで若者の失業率が高まり暴動などが起きたことも紹介され、やっと、若者が置かれた社会的背景に目が向けられていくという展開になりました。

ただし、スタジオのワタミの社長やテレビによく出ている波頭亮 などは、若者に対して<若者はちゃんと努力しろ。社会のせいにするな>というメッセージを発し続けていました。また、横浜市で教育委員になったヤンキー先生義家弘介も、そのような状況は「まったく問題ない」と言い放ち、若者が努力をするチャンスだと宣っていました(わかってないから教育委員になれたんでしょうね)。

結局、<どんなに失業率が高かろうと、仕事はどこかにあるから見つけろ、自分で仕事を作り出せ、インターネットでどんどん起業もできるぞ、やる気があればチャレンジできる、自己責任が大切だ>というのが、新自由主義オヤジの言いたいことなのです。<どんな仕事でもやりがいがあるはずだ。文句を言わず努力をしろ>というバカげた説教も聞かれましたが、そういうことを言う連中は、この社会のシステムを底辺で支えている若者の労働の現実を知っているのでしょうか。労働基準法などまったく通用しない、治外法権の労働現場を土台にしてはじめて実現される「自己努力」と「成功」の物語!

和民社長の渡邊美樹氏は「自由主義は努力しない人はご飯が食べられない社会なんです。そうじゃなければ社会主義がいいとなる」っていうようなことを言っていました。社会主義=統制経済=国家社会主義という図式が前提で彼は言っているのですが、結局、こういうことによって、労働者の権利を奪い競争を押し付ける新自由主義を合理化し、統制経済ではない「もう一つの世界」「第三の道」をつくり出す運動をつぶしていきたいということでしょう。 ※追記:私は渡邊氏の努力や経営を全面否定しているわけではありません(よく知りませんし)。

国家に依存する「モノとり」ではダメであり、自らが仕事やネットワークを創造しなけらばならないのは確かでしょう。しかし、そのための条件と能力が剥奪されている現実が再生産されているのに、自己責任にすべてを帰する新自由主義イデオロギーは、政府や大企業の責任を免罪するだけです。そして、若者たちを無力感に突き落とし、連帯を妨げ、「奴ら」のやりたい放題を許す野蛮なイデオロギーです。

(若者だけの問題ではないですが)

ともかく、この番組の前半の図式「大人vs若者」は、「導入」として敢えて採用したのでしょうが、浅薄だし長すぎました。ガングロギャルを出すなら、彼女達の言葉にならない思いをもっと徹底的に表現させるべきでしょう。

全体としては、泉谷しげるの感覚がよかったです。

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